司法書士の費用は定額制が分かりやすくていい? - あいはた司法書士事務所

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司法書士の費用は定額制が分かりやすくていい?

最近、司法書士の報酬にも「定額制」を導入する事務所が増えているようです。
 
・相続は一律〇万円
・売買は一律〇万円
・生前贈与は一律〇万円
・担保抹消は一律〇万円
 
といった感じで(仮にこれを「一律いくら方式」と呼びます)
 
それに対して、従来型の司法書士の報酬基準によると、
 
・不動産の評価額に応じて、基本の報酬が・・・円
・以後1000万円増えるごとに・・・円加算
・登記原因証明情報を作成したら1通・・・円
・不動産の個数が増えたら増えるごとに・・・円加算
・戸籍や住民票を取ったら1通・・・円
 
といった感じなので、たとえざっくりした概算だろうが、見積もりを出すためには事案ごとに個別具体的な資料を見ないと金額が出せません。(仮にこの方法を「個別算定方式」と呼びます)
 
「個別算定方式」だと、依頼する側からすると、「頼む前にいくらなのか分からないので不安・・・」と言う声をよく聞きます。
 
対して、「一律いくら方式」はわかりやすい。
 
不動産の評価額がいくらだろうと、融資を受ける金額がいくらだろうと、戸籍をたくさん取得しようがしまいが、不動産の個数が少なかろうが多かろうが、「一律〇万円!それ以上はいただきません!!」
 
見積もり依頼を受けた司法書士側は、いちいち計算せず、すぐに見積書をだせるので事務効率があがりますし、「明朗会計でわかりやすい」といえば聞こえはいいのですが、私は今のところ、「このシステムは導入したくない」と考えてます(あくまで個人的見解であり、定額制を導入する事務所を批判する趣旨ではありません)。
 
なぜそのように考えるかというと・・
 
100万円の雑種地の売買と、1億円のマンションの売買が同じ手数料でいいのか?
 
戸籍を3通だけ代わりにとった場合と、3か月かけて20通取得代行した場合が同じ手数料でいいのか?
 
相続する不動産の数が、土地と建物1つずつ合計2個の依頼者と、田舎の農地や山など合計100個の依頼者が同じ手数料でいいのか?
 
ということです。
 
ちょっと極端な例となりましたが、
 
つまりは、表面上の「わかりやすさ」を重視するのか、実際の依頼にかかる「手間」「責任」を重視するのか
 
ということです。
 
例えば、
従来からの「個別算定方式」だと、200万円の宅地の売買が5万円、1億円のマンションの売買が10万円だとします。
その場合、「一律いくら方式」でいく場合、不動産の評価額がいくらだろうと「売買は一律8万円とする」みたいな感じになります。
 
個別なら10万円になりそうな人が8万円ならラッキーです。
でも、個別なら5万円ですむ人が8万円かかることはどうなんでしょう・・
依頼した側は「自分が実は損をした」なんて気づかないでしょう。
 
ビジネス戦略といえばそうなんでしょうけど、私自身、そこにモヤモヤするんですよね。
 
もし逆に、私が司法書士に依頼する立場だったとしたら、
 
「手続きが簡易な人・価格が安い人の費用は安く、手続きがややこしい人・価格が高い人の費用は高くなる」ことは、きちんと説明を受ければ納得できると思います。
 
私は、「わかりやすさ」よりも「納得」が優先すると考えます。
 
そして、納得するためには、その基となる根拠の開示が必要です。
 
なぜその金額になるのか
 
だから、私は報酬基準を公開するように努めています。
 
「何をしたらいくらもらうのか」できるだけ細かい作業単位で決めるように工夫しています。
 
細かく設定をすることで、気持ちの面で堂々と報酬をいただけるようになりましたし、報酬をめぐって依頼者とトラブルになったことはありません。
 
以前、ある相談者から、次のようなお話をいただいたことがあり、そのことは今でもとても印象に残っています。
 
「あなたの前に別の司法書士に相談したら、最初は『だいたい10万円くらい・・』といわれ、『ちょっと高い』と話をしたら『じゃ、8万円でいいです』となった・・・その2万円は何・・?気分の問題なの・・・?こっちが高いと言わなかったら10万円のままだったの?そう考えると逆に不信感が出てきたんです。あなたは『資料を見てみないといくらになるかわからない』というが、そちらのほうがまだ信頼できると思います」と。
 
「2万円」は依頼する側にしてみたら大きな差ですよね。
それを理由もなく、その場の流れ、雰囲気で上げたり下げたりする行為は、依頼する側との間で「信頼関係が築けない」と、私は考えます。
 
そのため、当事務所では、初回の電話で「いくらかかるか」と聞かれても「資料をみないと正確にはわかりません。」とお答えしています。
「不親切な事務所だな」と感じる方もいるかもしれません。
そういう方はおそらく、いくつか電話してみて「手数料が安い事務所を探している」ということだと思いますが、私は価格の「安さ」で勝負はしません。
 
「あっちの事務所は〇万円でやってくれるといってるんだけど?」と言われれば、「でしたら、そちらの事務所にご依頼いただいて構いません」といいます。
 
資料も見ないまま、「だいたい〇万円くらい」と安請け合いした後、実際に話を聞き具体的な資料をみてるうちに複雑な事案であることがわかり、あれもしなきゃ、これもしなきゃと、当初想定していたよりどんどん金額が上がっていった場合、依頼する側としてはどう思うでしょうか?
 
不動産登記の費用は、最新の登記簿の情報、不動産の最新年度の評価額、どういう手続きを希望するのかを聞いた上でないとわかりません。
実際に登記簿を調べてみると「自分の親名義だと思ってたら、登記簿上は祖父の名義のままだった」とか、「住所や氏名が変わっているのに変更していないままだった」
「相続人は自分たちしかいないといっていたのに、戸籍を調べたら連絡先も知らない相続人がいることが判明した」なんてことは、割とよくあります。
 
相談者から必要な資料をご提示いただき事情をお伺いすれば、だいたいの費用は算出できます。事案の性質上、すぐに算出できない種類だとしても、「何をしたらいくら」という基準は事前にお示しできます。
 
見積書の作成後や報酬基準を説明した後に費用にご納得いただけない場合、当然ながら別の事務所をご検討いただいてかまいません。
 
私は、私を信頼し、費用負担に納得していただける依頼者のために、誠実に業務に取り組んでまいりたいと思います。