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株券発行会社における株券発行前の株式譲渡の有効性について
令和6年4月19日 最高裁判決
判示事項
1株券発行前にした株券発行会社の株式の譲渡は、譲渡当事者間においては、株券の交付がないことをもってその効力が否定されることはない
2株券発行会社の株式の譲受人は、譲渡人の株券発行会社に対する株券発行請求権を代位行使することができる
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92912
<参考>
会社法128条
(株券発行会社の株式の譲渡)
第百二十八条 株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。
ただし、自己株式の処分による株式の譲渡については、この限りでない。
2 株券の発行前にした譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じない。
★今後の実務への影響は?
平成18年5月1日以前から存在する株式会社において、実際には株券を発行していないにも関わらず、「株券発行会社」と登記されている会社が未だに多くあります。
(会社法施行前は、株券発行が原則だったため、当時不発行と登記していなかった会社以外は、会社法施行時に職権で『株券発行会社』の登記がされています)
実態に合わせてなるべく早めに株券発行会社である旨の定めを廃止するべきですが、
今回の最高裁を受け、「当事者間で有効なら放置しておいてもいいんじゃない?」と思う方がいるかもしれません。
上記最高裁は「当事者間の譲渡の効力」は否定していませんが、
株券発行会社である以上、株券を発行しない限り、会社に対しては譲渡の効力は生じないのです(128②)。
よって、株券発行会社である以上、株式の譲受人が株主としての権利行使をするには、事前に株券交付を受けないといけません。
そのまま放置しておくと、株主総会の開催などに支障が出る恐れがあります。
結局、実際には株券を発行していないし、今後も発行する予定がないのなら、すみやかに「株券発行会社の定め」を廃止するべきでしょう。
株券を廃止する場合、実際に株券を発行しているのか否かによって手続きの流れが異なりますので
必ず専門家(司法書士または弁護士)へご相談ください。