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不動産業者の皆様、4月から決済時の司法書士による本人確認の方法が変わっていますよ!
司法書士の本人確認義務
司法書士が不動産の決済立ち合いなどの「特定取引」の委任を依頼を受ける際、
依頼者等の本人確認、意思確認のほか、犯罪収益移転防止法(以下「犯収法」)上の取引時確認を行う必要があります。
従来からの本人特定事項は以下の通りで、それぞれ、個人の免許証やマイナンバーカード、法人の場合は登記事項証明書や印鑑証明書などで確認してきました。
【個人】氏名・住所・生年月日
【法人】名称・所在地
犯罪収益移転防止法の改正
令和6年4月1日の改正犯罪収益移転防止法の施行により、上記に加えて以下の項目が確認事項に追加されました。
【個人・法人共通】取引を行う目的 ※
【個人】職業
【法人】事業内容、実質的支配者の本人特定事項
中でも、法人の「実質的支配者」については、耳慣れない言葉ということもあり、
必要書類のご案内の際、仲介業者の方に説明してもピンと来ない方もいらっしゃいます。
株式会社の実質的支配者の確認方法
例えば、株式会社の場合の実質的支配者は、「会社の株を多く保有する方」と考えます。
①50%を超える株を保有する人がいる
→その人が実質的支配者
②①がいない場合で、25%を超える株を保有する人がいる
→その人が実質的支配者(複数の場合もあり)
③①・②がいない場合
→代表取締役が実質的支配者
実質的支配者を確認するための資料
以上のように申告を受けるのですが、確認するためには次の資料のいずれかを事前にご準備いただきます。
①株主名簿
②法人税申告書の別表2「同族会社等の判定に関する明細書」
③実質的支配者リスト(法務局発行)
本来は①が望ましいのですが、日頃からきちんと株主名簿を整備している中小企業は稀なため、一般的には②をご準備いただきます。
内容を確認し、どなたが実質的支配者に該当するのか確認した上でチェックシートにご記入をいただきます。
改正法施行から数か月が経過したが未だ周知不足
改正法が施行されて既に4か月以上経過しました。
決済のご依頼時に必要書類と合わせてご案内すると、
「初めて聞いた」「いつも頼む司法書士はそんなこといわないけど?」と未だに言われることもありますが、
その都度、改正法のパンフレットなどをお示ししながら手続きへの理解を求めています。
取引の目的の確認とは?
特に今回の改正で「取引の目的」を確認することが必要になっていますが、私たち司法書士にとってこれが非常にやりにくいものです。
不動産の取引の目的は様々あります。
売主側としては、例えば、以下のようなものが考えられます。
・融資返済資金の調達
・住み替え資金の調達
・事業資金の捻出
・生活資金の確保
・相続・事業承継対策
・資産整理
買主側としては、例えば、以下のようなものが考えられます。
・居住用
・事業用
・賃貸用
・開発用
・相続
・事業承継対策
・別荘
・セカンドハウス
・転売、投資用
スムーズな取引のために
買主はまだしも、売主の中には、「あまり人に言いたくない理由」で不動産を処分する方もいます。
決済の応接室で取引関係者全員一堂に会している中で「あなたはなんでこの不動産を売るんですか?」なんて普通聞けませんよね。
また、法人の実質的支配者についても、その場で急に「あなたの会社の株主の内訳をこの場で教えて下さい」といっても、
「なんでそんなこと言わなきゃいけないんだ!」と怒り出す人もいるかもしれません。
私としては、そのようなことにならないよう、事前に仲介業者の担当者の方に必要書類のご案内と一緒にチェックシートを渡しておき、
依頼者に確認が必要であることをあらかじめ説明をしてもらいます。
決済の前に事前に当てはまるものにチェックしたシートを当日持参いただき交付を受けるというのがスムーズだと考えます。
仲介業者の方には、決済当日のスムーズな進行のためにも、この取引時確認の追加へのご理解、依頼者への説明などにご協力をお願いします。